EMAからの重要なお知らせ
アメリカの「金本位制復帰」への準備行為をできるかぎり確認していこう。
問題意識は、「N・ショック」から始まっている。 繰り返しになるが、通説の「アメリカの覇権崩壊の始まり」説には、どうしても私の体が納得しないのだ。
それはおかしい、変だ、という思いがどうしても離れなかった。 私が初めて外国に出たのは、1970年9月、ある青少年の交流団体主催の訪独団の一員として約4週間西ドイツのフランクフルトでホームステイしたときであった。
前年に日本はGNPで西ドイツを抜きアメリカについで世界2位となったと、日本の大国ぶりがメディアで取り上げられていた。 たしか、外貨持ち出し限度は1人300ドルだった。
ドイツのなかも旅行してみたいし、イギリスにも行ってみたかった。 ひと月ちかくいるのに300ドルでは心もとないとドルを少し求めたが、なんとレートは1ドル400円であった。
仲間のホームステイしている家庭に泊めてもらっても、ドイツ人の生活の質の高さには鷲かされた。 なぜか早くアメリカへもいってみたいとの思いが募ってきたのだ。
モノ作りの敵日本たたきと金融業の敵スイスたたきN大統領が日本と西ドイツに「モノ作り」で追いつかれそうになり、1970年5月にアメリカの取るべき戦略的対応策を諮問したのが「国際貿易投資政策委員会(Wィリァムズ委員会)」であった。 ちょうど私が、西ドイツでカルチャーショックを受けていた頃、アメリカでは対日、対独経済戦略が練られていたのだ。
アメリカは「モノ作り」の競争力の低下を、アメリカが断然競争力で先行する「カネ(マネー)」という「新しい土俵」へと戦場を変えることを画策していたのである。 その答申では、「戦略的為替武器論」が展開されていた。
1971年7月の答申の1ヶ月後に「N・ショック」が発表された。 当時、日本では、「円高」「円安」の意味すら大混乱していた。
数字が大きくなるのは立派だ、だから円高だ、逆に数字が小さくなるのはかっこ悪い、だから円安だ、といった具合であった。 こんな状況では、「戦略的変動相場制」、あるいは「武器としての為替戦略」など思いつくはずもなかった。
2001年は「N・ショック」後 2000年という区切りの良い年である。 この間の2000年は、日米は「為替で殴り合い」をしていたようなものだ。
日米関係は「ジャパン・バッシング」「ジャパン・パッシング」「ジャパン・ナッシング」を経験した。 米独関係にはコンフリクトはあっても「バッシング」「バッシング」「ナッシング」はなかった。
西ドイツはアメリカのトラの尾を踏まないように戦略的決断をした。 一時的な犠牲を払いながらも、輸出市場をアメリカからヨーロッパへシフトさせていた。
だが、アメリカ経済に、「独り勝ち経済」の様相が見え始めた1990年代中頃になると、アメリカ社会に奇妙な動きが始まった。 スイスの第2次世界大戦中の行為を英米のメディアが問題にし始めた。
口火は1996年9月にイギリスの外務省が発表したある報告書だった。 スイスの諸銀行には今も、第2次世界大戦中にナチス・ドイツが被占領国やユダヤ人から奪い取った「金」の約9割(現在価値で約I億ドル)が眠っている、と発表した。
ロンドンから始まり、アメリカのワシントンやニューヨークのマスメディアが「スイスの金融界が永世中立という仮面のもとに悪業を働いていた」ことの話題を大きく取り上げるようになった。 第2次世界大戦中のホロコースト(ナチスによるユダヤ人大量虐殺)犠牲者の資産がスイスの銀行に眠ったままになっているとされる問題で、ある生存者の女性がスイス・ユニオン銀行(UBS)、スイス銀行(SBC)を相手に総額200億ドルの資産返還・賠償を求める集団訴訟をニューヨーク連邦裁判所に起こしたニュースも大きく報道された。
UBSとSBCは共同で、「休眠口座探しには客観的、公正に協力してきた。 筋の通らない申し立てには反論していく」と戦う姿勢を示した。
だが、強い大きな逆風により、とうとうスイスの銀行は、アメリカの新聞一面を使って、休眠口座として処理していた口座の持ち主の氏名を公表せざるをえないところまで追い詰められた。 矛先はスイスの中央銀行にまで及び始めた。
世界ユダヤ人会議は、「第2次世界大戦終結直後、スイス中央銀行は戦時中のナチスとの金取引を一部連合国側に報告していなかった」と指摘した。 在米ユダヤ人遺族はスイス中央銀行にも集団訴訟の動きを見せ始めた。
こうした一連のスイス・バッシングの動きに対して、スイスのJャグメッティ駐米大使は本国に、「今回の問題はスイスに対する戦争であり、我々は勝利しなければならない」と極秘の書簡を送ったが、これが発覚して即辞任に追い込まれた。 冷戦が終結してからは、「モノ作り」偏重の重商主義で荒稼ぎした日本に対する「モノ作りバッシング」が一段と激しく仕掛けられた。
それと同じレベルでスイスに対する「金融バッシング」が始まったのだ。 これらは第2次世界大戦の戦後処理の積み残しの部分なのだ。
冷戦には2つの意味がある。 1つは第2次世界大戦の戦後処理の延長戦の意味であり、もう1つは第3次世界大戦としての意味である。
そこで今や第2次世界大戦と冷戦に勝利して唯一超大国となったアメリカが、この二大積み残し問題に着手して、大掃除を始めたわけである。 ちなみにC大統領は冷戦後最初のアメリカ大統領であった。
このような「ナチス金塊問題」への動きを見ていると、1997年のアジア通貨危機にさいして、韓国やインドネシアなどでは国家の危急存亡のときに対して民間に退蔵されていた「金」が政府に献納され、為替レート維持のために使われたことが、思い出された。 地球規模でアメリカが創世紀を目指して、「世界中の金の叩き出し、吐き出させ」のイベントを始めたような気がしてならなかったのである。
アメリカのモノ作りの競争相手の「ジャパン・バッシング」とアメリカの金融ビジネスの競争相手の「スイス・バッシング」には、ある共通項がある。 ともに東西冷戦構造下で国力を強大化させてきた。
日本はいうまでもなく、スイスもハードカレンシーを持たないソ連が「金」を売却して外貨を調達する場所であった。 Sッチャー以前のイギリスの政治指導者には根強いアメリカに対する本家意識があった。
1968年3月のゴールドラッシュの国際通貨危機のとき、ロンドン金市場は一時閉鎖された。 これ以後チューリッヒ金市場はその地位を高めた。
ソ連の金売却にからむソ連情報もアメリカには貴重であった。 スイスはナチスの金塊を含む第2次世界大戦中に膨大にふやした「金」保有高による「スイスフラン高」と「銀行の秘密口座」で、世界中から多くの資金をとりこんで一大金融国家を作り上げていた。
ところが、1997年廻月にUBSとSBCは合併を発表し、将来的にアメリカ市場での株式上場を検討していることを明らかにした。 UBSのF最高財務責任者は、「共同でIAS(国際会計基準)に従って決算発表を行なうことが両行の明確な意思である」と述べた。
これはスイス大手銀行のアメリカの会計ルールに従いアメリカの金融当局の監視下に入るという恭順の意思表示ともとれる。
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